調査結果をご覧いただく上での留意点
この調査は、地域の皆さんから透視度計と簡易水質検査器材(パックテスト)を使って調査をしていただいたものです。水質については、調べる水の採水場所や時期、気象条件などによって変化しますので、この測定結果はあくまで傾向を知る目安と考えてください。
1、透視度計について
透視度計は、メモリの付いた透明の管で、中に水を入れ、上からのぞきながら下に付いている栓を開き、少しずつ水を抜いていって底にある2重の十字線が見えたときの水の高さ(cm)を測ります。その高さが透視度になり、水が濁っているほど透視度は小さくなります。
透視度は、透視度計さえあれば、どこでも、短時間に測定できるという利点がありますが、測定範囲が狭く、人によって誤差があるという短所があります。また、降雨等によっても測定値は大きく変化します。
(写真1:透視度測定のようす)
2、パックテストについて
パックテストはポリエチレンのチューブでできていて、中に試薬が入っています。使い方は、 1.チューブ先端の栓を引き抜いて、調べたい水をスポイトのように吸い込む、2. 時間がたつと試薬が溶け、水の色が変化しますので、標準色と比べて、その濃度を判定する、というものです。このようにパックテストは、誰でも、簡単かつ安全に調査でき、結果もその場で得られるので、学校や社会教育の場でも教材として使われています。
しかし、1.濃度の読み取りに個人差が生じる、2. 細かい数値が読み取れない、3.誤差を生じさせる妨害物質が多い、というような欠点も持っているため、公式の測定値としては認められていません。なお、この調査では、測定の精度を高めるために、同じ地点について同じ項目を3回測定し、その平均を算出しています。
(写真2:パックテストと比色カード)
水質検査項目
○水素イオン濃度(pH)
酸性、アルカリ性を表す尺度で、ピーエイチ(又はペーハー)と読みます。pH7が中性で、数値が小さくなるほど酸性が強く、数値が大きくなるほどアルカリ性が強いことを示します。
川のpHは、通常6~8程度です。また、一般にpH5.6以下の雨を酸性雨といいます。
○化学的酸素要求量(COD)
水中の有機物を薬品で分解したときに消費(要求)される酸素の量です。
この数値が大きいほど水中に有機物が多く、汚れていることを表します。
きれいな川は、0~2mg/l(リットル)くらいです。
※mg/l(リットル):濃度の単位。
水1l(リットル)中に含まれる物質の量で、「mg」は、1,000分の1g。以下同じ。
※ヤマメやイワナは1㎎/l(リットル)、サケやアユは3㎎/l(リットル)以下の水にすみ、汚染に強いコイやフナは5mg/l(リットル)でもすめるといわれています。
○アンモニア性窒素
生物の死骸やし尿が分解する過程で発生する物質です。
畜産排水や生活排水などが流れ込むと、水中のアンモニアが増えます。
アンモニアは微生物や酸素の働きで、亜硝酸、硝酸と変化しますので、検出された場合は、調査地点の近くで汚染があったか、汚染して間もないことが推定できます。
※「性」は、「体」あるいは「態」と表現する場合もあります。以下同じ。
0.05㎎/l(リットル) | 河川の上流水や湧水 |
0.1~0.4mg/l(リットル) | 雨水 |
0.5~5mg/l(リットル) | 河川の下流水 |
5㎎/l(リットル)以上 | 下水 |
○亜硝酸性窒素
アンモニアが水中で変化して、亜硝酸体窒素となります。
亜硝酸が検出されれば、近くに汚染源があることを意味します。
0.0018~0.03mg/l(リットル) | 河川の上流水 |
0.09mg/l(リットル) | 河川の下流水 |
○硝酸性窒素
不安定な亜硝酸性窒素が変化して、安定した硝酸性窒素になります。
閉鎖性水域(湖沼や湾など)では、濃度が高いと藻やプランクトンの異常発生の原因になります。
0.2~0.4mg/l(リットル) | 雨水 |
0.2~1.0mg/l(リットル) | 河川の上流水 |
2.0~6.0mg/l(リットル) | 河川の下流水 |
○リン酸性リン
生物の体が分解されるときに出るほか、生活排水や化学肥料などが流れ込むことでも増えます。
0.05mg/l(リットル)以下 | 雨水、河川の上流水 |
0.1~1.0mg/l (リットル) | 河川の下流水 |
(参考:だれでもできるパックテストで環境しらべ(合同出版))
調査データの評価基準について
調査結果を総合的にわかり易く表すために、清流指標「水辺診断書」による評価を行っています。評価方法は、以下の(1)~(5)の5項目についてそれぞれの項目が20点満点、合計100点満点とします。
(1)きれいさ~有機汚濁からみた指標(COD)
- CODパックテストにより得られた測定値を用いて下表のとおり得点化。
- パックテストの結果が低い方がきれいな水で、得点が高くなります。
得点 | パックテスト濃度(mg/L) |
---|---|
20点 | COD≦2 |
15点 | 2<COD≦4 |
10点 | 4<COD≦6 |
5点 | 6<COD≦8 |
0点 | 8<COD |
(2)きれいさ~藻類繁殖に関する栄養塩類からみた指標(窒素、リン)
- 窒素とリンは、それぞれ10点満点として合計20点満点とします。
■窒素は、硝酸性窒素、亜硝酸性窒素及びアンモニア性窒素の合計値について、下表のとおり得点化。
得点 | 窒素 パックテスト濃度合計値(mg/L) |
---|---|
10点 | N<0.4 |
8点 | 0.4≦N<1 |
6点 | 1≦N<2 |
4点 | 2≦N<5 |
2点 | 5≦N<10 |
0点 | 10≦N |
■リンは河川における実際の濃度を考慮し、リン酸性リンのパックテストの濃度区分に応じて、下表のとおり得点化。
得点 | リン パックテスト濃度(mg/L) |
---|---|
10点 | P<0.02 |
8点 | 0.02≦P<0.05 |
6点 | 0.05≦P<0.1 |
4点 | 0.1≦P<0.2 |
2点 | 0.2≦P<0.5 |
0点 | 0.5≦P |
(3)透明さ(透視度)
- 濁り成分によって左右される透明さを透視度の測定値を用いて、下表のとおり得点化。
- 透視度の結果が高いほど澄んだ水であり、得点が高くなります。
得点 | 透視度 |
20点 | 100≦透視度 |
15点 | 60≦透視度<100 |
10点 | 30≦透視度<60 |
5点 | 10≦透視度<30 |
0点 | 透視度<10 |
(4)水のようす
- 水のにおい、油膜、泡立ち、浮遊ごみの4 項目は各5点満点で、その合計値(20点満点)を水のようすの得点とします。
(5)川とまわりのようす
- 川の流れのようす、水辺の散乱ゴミ、川の中の生きもののすみ場、水辺の生きもののすみ場の4項目は各5点満点で、その合計値(20点満点)を川とまわりのようすの得点とします。